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2008年11月04日

マニア界隈へ繋がる三国志演義派生作の系譜

昨日書いた記事と関連している様な内容なのですが、折角なのでこの文章も公開してみようと思います。
実は、9月頭から書いては直しを繰り返していた文章です。11月4日に公開する内容に手直ししてみました。
それでは、以下どうぞ。


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つい1ヶ月程前まで『恋(中略)双』が毎週テレビで放送していましたが・・・。
ゴメンナサイ・・・いくら好きな声優さんが出ていても、いくら無料で流れている地上波放送アニメでも、やっぱり見れないものは見れません。
『良い・悪い』『好き・嫌い』そんなものを超越して、中国史マニアとしては『見たくない』という感情が強すぎます。


だいたい、なんで中国の三国時代なのですか!?
いや、ホント思うんですよ?
「戦国武将が全員女の子だった!(※1)」とか「太平記の人物の宿命を受け継いだ高校生達による格闘漫画!」とか「我々が知る実際の日本史とは別の、もうひとつの時空の幻想源平合戦(※2)」とかでも良いじゃないですか!
何故に、三国志なのかと。
わざわざ、外国の歴史なのかと。
そんなにみんな、三国志大好きなのか?
以前も別の記事で書いたけど、日本人のどのくらいの人が三国志演義、もしくはそれに準ずる作品を読んだことがあるんだ?
どこか大きな研究機関で、是非調査して下さい!もしくは、既にどこかで調査済みならば、是非その結果を教えて下さい!
自分の周囲の人間から得られる感触として、読んだことのある人なんて、そんなには多くないと思うんですが。


とは言え、書いていて自分でも解りますよ?
道行く人に、『平家物語』『太平記』『南総里見八犬伝』『封神演義』『水滸伝』『三国志演義』(※3)って並べて、「どの作品が馴染み深いですか?」って質問したら、『平家物語』と競るとは思うけど『三国志演義』がトップでしょう。
特に秋葉原辺りで聞けば間違いなく『三国志演義』がトップでしょう。


しかし、だからこそ思うんですよ。
なんで「読んだ事」が無いにもかかわらず「馴染み深い」のか?
そして、何故に最近の日本のマニアックな界隈では、こんなにも三国時代という世界設定が「馴染み深い」ものになってしまっているのか?
ホント、不思議で不思議で仕方がない!
あっちでもこっちでも『三国志』。挙げ句の果てには、劉備ガ○ダムですよ!?もはや、何が何やらですよ!


ここら辺の事情を整理して納得した理由が導き出されれば、多少自分の中の感情にも変化があるかもしれない。
納得すれば音泉で配信している『真・(中略)双』のラジオも視聴出来るかもしれない。・・・出来ないままかもしれないけど。


そんなこんなで『ゲームやアニメのマニアック路線に至る日本での三国志演義の系譜』を、一番古い所から整理してみました。





元禄2年〜元禄5年(1689年〜1692年)『通俗三国志』(湖南文山)
今回の内容とは直接には関係無いけど、日本におけるライト層への三国志普及の最初の1歩である為、記載しておこうと思う。
それまで漢文のみだった『三国志演義』を初めて日本語に翻訳。
漢文の素養のない普通の人でも、気軽に読める様になった。
これ以降、歌舞伎等様々な形で三国志ものは、町人文化に浸透していく事となる。
ちなみに『西遊記』や『水滸伝』に先んじ、『通俗三国志』が日本初の中国小説翻訳作品である。
ある意味、日本国内で三国時代が大人気なのは、ここから始まっているのかもしれない。



1939年〜1940年『三国志』(吉川英治)
吉川版三国志
代表作『宮本武蔵』を書き終え、作家としての絶頂期にあった吉川英治氏が執筆。
『三国志演義』を日本人向けに再構成。
日本人に馴染まないエピソード(人肉とか)に配慮したり、逆に日本人の好きそうな劉備の親孝行エピソードとかを創設したりしている。
また、原作の『三国志演義』の弱点である、古典故に登場人物の個性があまり強くない部分を補うべく、登場人物のキャラ付けとも言える、エピソード補強ないしエピソードそのものを創設(劉備の恋の話等)したりしている。
物語のラストを、五丈原での諸葛亮の死とそれに付随する幾つかの出来事で締めており(晋王朝による三国統一まで書いていない)、日本における「五丈原で三国時代は終わり」の風潮を作った最初の作品。
諸葛亮の死で物語を終えた理由は、物語の核となれるキャラクターがそれ以降には存在しないかららしい。
今のキャラクター性の強い三国モノの原点は、ここにあると思われる。



1971年〜1986年『三国志』(横山光輝)
横山版三国志
漫画という「画像」の付いた点で、画期的なこの作品。今でも最も初心者向けの三国時代を纏めた本と言える。
ただ、連載初期は服飾や武器、地形等の参考資料が乏しく、張飛のキャラデザや十常侍のヒゲ等、所々に首をひねる部分が存在している。
(1972年9月29日が「日中国交正常化」である為、連載初期には現地取材も出来ず書籍も中国から輸入出来ない為、国内だけでは中国関係の資料は集め辛かったらしい。初期のキャラデザには葛飾北斎の錦絵を参考にしたそうだ。光栄『三国志グラフティ』の横山光輝氏インタビュー記事より。)
そして、日本国内でスタンダードの位置を確保していた吉川英治版『三国志』から最も強く影響を受けており、夏侯惇を「かこうとん」ではなく「かこうじゅん」と読む点や、劉備の恋の話等、吉川英治氏が作り上げた三国時代の世界観を、画像付きで更に発展させた形となっている。
また、一応駆け足ながら最終巻を使って蜀滅亡までを描いている点も評価できる。



1982年10月2日〜1984年3月24日『人形劇 三国志』(NHK)
人形劇三国志
天下のNHKが各話45分の全68話で制作した、超大作。黄巾の乱から五丈原までを全て映像化した希有な作品。
NHKであるが故に何度も再放送されていて、ふと点けたテレビでやっていたこの作品で三国時代の話を知ったという人は、意外と多いと思われる(少なくとも私の通った中学校では、夕方にやっていた『人形劇 三国志』がブームの火付け役になった)。
横山光輝版と違い、日中の国交も回復していて、おそらく豊富な資金&資料に恵まれた故、各登場人物のキャラデザ・装備・服装等は、文句の付けようのない素晴らしさであった。
ただ、人形劇を見る子供層をターゲットとしている為、ストーリーは劉備陣営を正義の味方とした、『三国志演義』よりも更に勧善懲悪な内容となっており、吉川・横山の路線とはやや離れている。
曹操やその麾下の人物は序盤で劉備達と共に董卓や呂布と戦ったりする為か、比較的酷いキャラ設定はされていないが、中盤以降から出てくる形となる呉の人物のキャラ設定の小物・悪役っぷりは、見ていて悲しい気持ちになってくる。
また、無駄に左慈や管輅等の仙人っぽい連中が活躍するなど、ファンタジー色がかなり強い。
間口は広いものの、三国志に詳しい人からすると苦笑せざるを得ない部分は多々ある(作家の田中芳樹氏も著書で人形劇のストーリーに関して批判している)。



1985年〜現在『三國志』(光栄)
シミュレーション三国志
漫画・テレビと来たら、もちろん次はゲーム化しかない。その点、三国志演義の派生系作品は各自のスタンドプレーながら、今のメディアミックスを先取りしているのかもしれない。
そんなこんなで、横山光輝版『三国志』の完結直前にして『人形劇 三国志』放送終了直後のこの年、今も続くシリーズものゲームの雄『三國志』が光栄(現・コーエー)から発売(PC88版)。
シリーズものゲームとして、現在『三國志11』まで発売されている。
『三國志』と並ぶ同社の看板ゲーム『信長の野望』の第1作が大名しか居ない(配下武将の概念の無い『織田家』等の大名家を使って国盗りゲームを行う)作品だったのに対し、この『三國志』は第1作目から知力・武力等の能力値の付いた255人もの武将を操り中国の統一を目指すゲームとなっており、「キャラクター性重視の三国時代をモチーフにした作品」という点では「能力の数値化」という、ひとつの極みに至ったとも言える。(ちなみに、比較対照としてはややズレているが、1986年5月27日発売のドラゴンクエスト1の総登場モンスター数が40体、1981年発売のWizardry #1 狂王の試練場の総登場モンスター数が100体。固有の能力値をもった(アイテムではない)キャラクターの量という点で、光栄版『三國志』の凄さが解る。)
「知力100の諸葛亮」や「武力100の呂布」等、登場人物の個性をゲーム上のコマとしての強さで実感できるのである。今までにないキャラクター性の付与と言えるだろう。
この「能力値の数値化」のお陰で、「田豊と姜維はどっちが頭が良い?」「夏侯覇と華雄はどっちが強い?」といった感じの、今までなら時間的・空間的に比較するには膨大な三国志の知識が必要だった(正確に言えば比較など出来ようはずもなかった)事柄が誰でも簡単に行えるようになり、登場人物の個性はユーザーの中で固定されていく事となる。
また、余談ながら光栄は、ゲーム『三國志』シリーズの攻略本から始まり、『人物辞典』『爆笑三國志シリーズ』などの副読本的なものから、趙雲などの人気武将を主役にしたオリジナルの小説、有名声優をこれでもかと配役した『CDドラマコレクションズ 三國志』などなど、今では珍しくない自社作品を使った多方面へのメディアミックスを行っており、これらがマニアックな層に及ぼした影響も無視できるものでは無いと思われる。



2000年〜現在『真・三國無双』(コーエー)
三国無双
年々、シミュレーションゲームの『三國志』シリーズが正史寄りの硬派な作品になっていく中、誰でも気軽に遊べる三国志演義をベースにしたゲームとしての地位を盤石なものにしているのが、この無双シリーズ。
1対多数を実現できる爽快なアクションゲームとしての出来の良さもさることながら、登場人物のキャラクター設定も実に良く作ってある。
長年、シリーズゲームとしてのシミュレーション版『三國志』をリリースし、それに付随する様々なメディアミックス展開を行ってきたコーエーだからこそ作成出来た、一言で言うと「イメージを崩しすぎずにヘンな」キャラ設定(一部除く)。
従来の三国志演義系のイメージを受け継いだ、「弱い者の味方」的な勢力設定の劉備陣営。
漫画『蒼天航路』などの影響が見られる、正史系正統路線として「歴史の覇者」的な勢力設定の曹操陣営。
他作品(小説・漫画等)で固定化されたイメージがあまりないことを逆手にとって、週間少年ジャンプでやっていた『封神演義』(※4)の様に、原型をとどめないほどの新しいキャラクター性を与え、三国志を全く知らない層でも話を楽しめる「熱いスポコン・友情」的な設定の孫堅陣営。
その他にも、「酒池肉林の夢」な董卓、「名門」と叫きまくる袁紹、「登場するだけで化け物扱い」の呂布、などなど。
おかしな設定も多々あるが、シミュレーションゲームでは「能力値」と「顔グラフィック」だけだったキャラクターの個性が、演義・正史・その他の最近流行の路線まで柔軟に、かつ、バランス良く取り入れ、もはや『無双シリーズ』としてのひとつの三国時代の世界を構築している(※5)と言っても過言ではない。
ミリオンを突破する人気ゲームとなり、現在の三国志という単語の知名度を牽引する最大の作品となっている事は間違いないと思われる。





各ジャンルの代表的な三国志演義派生系作品を挙げてきてみました。
昭和初期から小説として広まった作品が、昭和後期に漫画化され、そしてテレビでの人形劇放送開始、その後ゲーム化される。ゲームも、最初はシミュレーションゲーム、後にアクションゲームとして更に人口に膾炙するようになっていった訳です。
70年以降の三国派生作の流れ
昨今も角川辺りで行っている様な、綺麗なメディアミックス展開ですね。
こうして、歴史と創作をごっちゃにしたまま、『三国志』という単語は一人歩きして行って、現在に至っているという訳ですね。


そもそも最初に話題に出した『恋(中略)双』は、タイトルからしてコーエーの『三(中略)双』のパロディであり、きちんと『乙女だらけの三国志演義』という副題を付けている事からも、正史とは関係ないスタンスを取っているだけ、まだ良心的な方な訳ですよね。
うん、この文章書いてきて、多少は自分の中で受け入れられるかもしれない気分になってきた。よかった。


まあ、いろいろと思う所はある訳ですけど、私が思うだけですので、作品を楽しんでいる人がいるなら、それはそれで良い事だと思いますよ。
昔から、『三国志好きの少年がタイムスリップして三国時代で活躍する漫画』とか、『諸葛亮が主人公の某ホモ小説』とか、『于禁が女のアニメ』とか、「作っている奴をちょっとここに呼べよ」的な作品はいくらでも溢れているのでね(笑)。
今、例に挙げた作品に比べたらマシなモノも沢山あるよね。


そして、やっぱり考えれば考えるほど「羅貫中は良い仕事をしたのだなぁ」と感嘆せざるを得ません。
陳寿、裴松之と続く【歴史系】と、講談、三国志平話に代表される【物語系】を、どこまでが【歴史】でどこまでが【物語】なのか、その境界が解らなくなるくらい見事に融合させたのですから。
他の通俗小説(封神演義、西遊記、水滸伝、等)が、比較的物語寄りな事を考えると、三国志演義の絶妙な虚実の混ぜ方は、やはり素晴らしいのでしょう。


そんなこんなで何が書きたかったのか、文章が長くなってきて解らなくなってきました。
つまり、
「その作品が自分にとって楽しければ良いんじゃないの」
と言う事と
「楽しくない人にとって『この物語はフィクションです。実在する(中略)関係有りません。』の一言は、事の境界線を明確にする上でも必要な様式美なのだなぁ」
と言う事が言いたかったのではないかと思いますよ、多分。


そんな曖昧な感じで終わる。


(※1:この間見かけた雑誌記事だと、そんなエロゲが出るらしい。)

(※2:源平合戦の独自作品は、『遙かなる時の中で3』でコーエーがやってるの知ってますけどね。我が妹のやっているゲームに、ヘソ出し衣装の梶原景時(CV:井上和彦)が出ていた時は衝撃を受けました。)

(※3:日本の戦国時代は、戦国時代として一つに纏まった有名作品が無い&代表的な古典作品をあげ辛いので未記入。そして、この事はコーエーの『戦国無双』シリーズのストーリー内容が迷走している原因でもあると思う。)

(※4:三国志とは直に関係ないが、週間少年ジャンプ連載の藤崎竜版『封神演義』は、私にとって凄まじい衝撃だった。当時高校生だった私(もちろん原作の安能務版『封神演義』は連載開始の数年前に読んでいた)はジャンプで第1話を読んで「こういった方向性での見せ方があったか!」と感動したのを覚えている。この事はいつか別記事で書いてみたいと思う。)

(※5:それ故に、『無双OROCHI』というパロディのスピンオフなどという芸当が出来る。反面、『真・三國無双5』で設定の根底からの再構成を行おうとした時には、ユーザーからとても大きな拒否反応が起きる事となった。)
posted by 淵明 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 逸般人向け
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